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東京地方裁判所 昭和44年(借チ)3007号 決定

甲事件申立人乙事件相手方

斯波政夫

右代理人

喜田川元

外一名

甲事件相手方乙事件申立人

尾亦武実

右代理人

池田由太郎

右斯波政夫(以下申立人という)の申立にかかる甲事件につき、その相手方である尾亦武実(以下相手方という)から乙事件の申立があつたので、当裁判所は次のとおり決定する。

主文

一  申立人から相手方に対し別紙目録(二)記載の土地の賃借権及び同目録(三)記載の建物を代金三、二二四万九、三二〇円で売り渡すことを命ずる。

二  申立人は相手方に対し、相手方から右代金三、二二四万九、三二〇円の支払を受けるのと引換えに、前項の建物につき所有権移転登記をなし、かつ、同建物を明渡せ。

三  相手方は申立人に対し、申立人から前項の所有権移転登記手続及び建物明渡を受けるのと引換えに、第一項の代金三、二二四万九、三二〇円を支払え。

理由

(甲事件申立の要旨)

申立外丸山愛作は昭和三〇年三月頃相手方より別紙目録(一)記載の土地(以下(一)の土地という)を、建物所有の目的をもつて賃借し、同土地に同目録(三)記載の建物(以下本件建物という)を、所有していたところ右建物は競売に付され、申立人においてこれを競落し、昭和四三年九月一〇日右競売代金一〇〇万円を支払つた。

そこで申立人は本件建物の取得に伴う前記(一)の土地の賃借権取得につき、賃貸人である相手方の承諾を求めたが、承諾が得られない。

よつて、右承諾に代わる許可の裁判を求める。

(乙事件の要旨)

相手方は本件建物及び別紙目録(二)記載の土地(以下本件土地という)の賃借権(相手方の本件申立には右賃借権譲受の申立も包含されているものと解する)を自ら譲受けたいので、その旨の裁判を求める。

(当裁判所の判断)

申立人は相手方が申立外丸山愛作に賃貸した土地は前記(一)の土地であつて、その時期は昭和三〇年三月頃である旨主張するが、本件資料によれば、相手方は昭和三二年五月八日前記(一)の土地のうち本件土地のみを丸山愛作に賃貸したものであること、その他甲事件申立要旨の事実が認められる。そして、これに対し、相手方は乙事件の申立をしているので、当裁判所は対価を定めて乙事件の申立にかかる譲渡を命ずることとする。

右対価について鑑定委員会の意見によれば(昭和五〇年五月一二日付)、本件土地の更地価格を五、二三〇万九、三六〇円(一平方メートル当り一八万四、〇〇〇円)とし、建付地価格を右更地価格より二〇万円減の五、二一〇万九、三六〇円、賃借権の価格を右建付地価格の七〇パーセントに当る三、六四七万六、五〇〇円、賃借権譲渡承諾料を右賃借権価格の一〇パーセントに当る額とした上、右賃借権価格から賃借権譲渡承諾料相当額を控除した三、二八二万八、八五〇円をもつて相手方が本件土地賃借権を譲受ける場合の対価とし、また、本件建物の査定価格一五万円をもつて本件建物の対価とした。当裁判所は右鑑定委員会の意見のうち、賃借権譲渡承諾料の額を賃借権価格の一〇パーセントとした点は、本件における申立人の競落価格その他の諸事情にかんがみ、これを賃借権価格の一二パーセントとするのを相当と思料するがその余の点については右鑑定委員会の意見を相当と認める。

そこで、相手方が本件建物及び本件土地賃借権を譲受けるについての対価は、右鑑定委員会の意見による賃借権価格三、六四七万六、五〇〇円からその一二パーセントに当る賃借権譲渡承諾料相当額四三七万七、一八〇円を控除した残額三、二〇九万九三二〇円と右鑑定委員会の意見による建物価格一五万円との合計三、二二四万九、三二〇と定める。

本件の場合右譲受対価の支払いと、本件建物の所有権移転登記手続及び建物明渡とを同時に履行させるのが相当である。

よつて、主文のとおり決定する。

(中島恒)

〈別紙目録省略〉

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